仕掛けを連動させて売上アップへ。
大きなシナジーを生み出す、「ZOZO」のeギフト戦略 

LINEギフトで取り扱っているギフトには、大きく「配送ギフト」と「eギフト」の2種類があります。 
商品そのものをお届けする配送ギフトとは異なり、eギフトとはもらった人が簡単に商品と引き換えられる電子チケットのこと。eギフトには、オンライン、または実店舗で商品やサービスと引き換えるタイプ、さらにはカタログギフトとして使えるものなど、狙いに応じて様々なタイプが用意されています。 
LINE上で完結できる手軽さはもちろん、誕生日などのイベント当日に贈りやすい点に加え、eギフトには受け取った側が自由に商品を選べるタイプも多く、相手の好みを知らなくても気軽に贈れるなど多くのメリットがあります。
また、出店者側にとっても、商品現物のオペレーションが省けるほか、実店舗への来店誘致に繋がるなど、やはり多くのメリットが期待できます。 

そこで今回は、eギフトの活用事例として、「ZOZOTOWN」を運営する株式会社ZOZO・グループ事業戦略本部の山口琢也さん、白土美喜さんを直撃。「ZOZOTOWN」でのお買い物に使えるeギフトを販売・運用し、目覚ましい成果をあげている同社に活用の秘訣をお聞きしました。 

LINEというプラットフォームが顧客との新たなタッチポイントに 

まずはLINEギフト出店の経緯から教えてください。 

山口さん:出店を始めたのは2021年の11月です。多くの方が利用するメッセンジャーアプリであるLINEがギフトマーケットに進出したということで、まだ出会っていないユーザーと繋がるチャンスであると考えたことがきっかけでした。我々もECを展開しており、送り先の住所を聞かなくても成立するLINEギフトはサービスとして魅力的でした。 

また、2021 年 3 月に実現した経営統合により我々もLINEと同じグループの一員となり、グループ内でコラボレーションしてシナジーを生む取り組みとしても、良い機会なのではないかと考えました。我々が所属しているグループ事業戦略本部は、まさにシナジー効果によって事業やサービスの最大化を図り、グループ全体で新しい価値の創出を目指す部門ですから。 

左から、株式会社ZOZO・グループ事業戦略本部の白土美喜さん、山口琢也さん。

自社でZOZOTOWNという強いECを持っていることから、棲み分けの問題がネックになることはなかったのでしょうか。

山口さん:市場を食い合うのではないかという懸念はありませんでした。というのも、LINEのユーザー数9600万人(※)という数字からすれば、新規顧客との接点が得られるメリットのほうが、圧倒的に大きいと考えたためです。我々の理想は、ZOZOTOWNをご利用いただいたユーザーが、周囲の方にサービスを勧めてくれることで、eギフトはまさにそのための格好のツールになると感じています。
※LINEアプリ ⽉間アクティブユーザー 2023年12月末時点

出店から2年半。ここまでの成果についてはいかがですか。

白土さん:eギフトという、手軽にプレゼントを贈り合える手法が奏功し、新規ユーザーは確実に増えています。それから、しばらくご利用していなかった休眠ユーザーが、再びZOZOTOWNで買い物をするケースが多く、これはLINEが新たなタッチポイントになっているからこそだと受け止めています。

また、ZOZOTOWNのセールやキャンペーンのタイミングで、LINEギフトがクーポンを訴求したことで、いっそう売上げが伸長したのも印象的でした。我々がシーズナルのクーポンを配布した時も売上げは伸びますが、LINEギフトのクーポンが配布される時はさらにその3倍くらい伸びますからね。 

山口さん:本当に、LINEギフトから何らかの仕掛けがあった日というのは、売上げがとてつもなくスパイクするんですよ。毎回、あまりにリアリティのない数字を見て疑ってしまうほどです(笑)。LINEがいかに多くのユーザーと繋がっているか、そのパワーをあらためて実感させられています。 

予想以上の成果をあげた5万円のeギフト 

ZOZOTOWNとLINEギフト、2つのプラットフォームでニーズやトレンドの違いというのは感じていますか?

白土さん:LINE ギフトでもらった ZOZO ポイントをお持ちの方の購買単価が少し高めなのは、特徴的な点です。やはり贈られたポイントの分、いつもより奮発する、ということがあるのでしょう。 

では、ユーザーの年齢層など、属性に違いは? 

白土さん:ZOZOTOWNのユーザーは20代前半から30代にかけてがボリュームゾーンで、およそ7割が女性です。これはLINEギフトの利用層とも一致しているので、その意味でも相性の良さを感じています。 
山口さん:LINEそのものがシニア層にもどんどん普及している現実を見れば、今後はたとえば母の日や父の日などのギフトに、もっとZOZOTOWNを使ってもらえる期待もありますから、コミュニケーション次第で大きな伸び代があると考えています。 

ところで、御社ではこれまで、1万5000円、2万円、5万円と、高価格帯のeギフトを提供しています。これはどのような狙いによるものでしょうか。 

白土さん:ユーザーのニーズを探るために、実験的に提供をはじめたところが大きいですね。もともとは1万円が最も高い券種でしたが、1万5000円、2万円と少しずつ金額設定を上げてみたところ、これが思いのほか好調で。そこで2023年12月に、5万円の券種を追加しました。 

5万円のeギフト、反響はいかがでしたか? 

白土さん:正直、購入してくれる方がいるか半信半疑でしたが、実際に提供してみたら予想以上に購入していただけました。ギフトとしてというより、自分へのご褒美として利用する方が多かったのかもしれません。 
山口さん:5万円というのは、アウターなどの比較的高額なカテゴリーの商品において、頑張ってもうワンランク上のアイテムに手を伸ばすのにちょうどいい金額設定なのだと思います。5万円の券種があることで需要が喚起される側面はあるでしょうね。 

また、年末年始の新春ギフト特集に合わせて、熨斗のデザインをあしらったeギフトがリリースされたのも印象的でした。  

山口さん:これはLINEギフトからのアイデアで、季節に合わせてクリエイティブを変えることで贈る目的が明確になり、販促につながると考えています。
LINEギフトの皆さんの遊び心で、「こっちのほうがユーザーが楽しいからやってみよう」というスタンスは、それだけでサービスを使いたくなる理由になり得ると思います。春先、トーク画面上に桜が舞い散る仕様などもそうですが、これほど多くの方がLINEを使っているのも、こうしたカルチャーがあればこそでしょう。 

新春ギフト特集に合わせてリリースされた熨斗デザイン。お正月らしい華やかさで、特集内でも目を引いていた。

こうしたLINEギフトでの一連の取り組み、社内ではどのように評価されていますか? 

山口さん:おかげさまで、大変高い評価を得ています。毎回、期初にLINEギフトの皆さんと「このくらいの予算を目指しましょう」と協議するのですが、時には3〜4倍くらいの売上げが立ちます。それだけギフトマーケットにポテンシャルがあるということですから、我々としても今後の戦略に活かしていきたいと考えています。 

今後、LINEギフトの取り組みを通して目指すことは何でしょうか。

白土さん:eギフトがどのような人にどのような目的で使われているのか、さらに分析していきたいと思います。もっと多くの方にZOZOTOWNをご利用いただくために、eギフトは大きな鍵になると思うので、まだまだやらなければならないことは多いと思います。 
山口さん:ギフト全体の観点で見れば、対面ではなくオンライン上で贈るギフト文化というのは、シェアとしてまだ小さなものでしょう。今後、ZOZOTOWNを通して多くの方にeギフトを体験していただき、これを当たり前の文化にしていくことが私たちの目標です。そのためにLINEギフトは切っても切り離せないツールですから、ぜひ一緒にこの市場を盛り上げていけたら嬉しいですね。 

(原稿:友清哲/撮影:木原基行)2024年3月26日