プラットフォームの特徴を知り、商品開発に活かす。洋菓子ブランドのシュゼットがLINEギフトでヒットを生むまで

「アンリ・シャルパンティエ」「C³(シーキューブ)」などの洋菓子ブランドを展開している、株式会社シュゼット。百貨店を始めとする実店舗での対面販売を中心としてきた同社ですが、LINEギフト出店以降、目覚ましい成果をあげています。その背景と秘訣について、ダイレクト・マーケティング部の森田一義さん、越智真理子さんに話を聞きました。

新規顧客へのアプローチにLINEギフトは最適

お二人ともダイレクト・マーケティング部の所属ですが、それぞれどのような業務を担当されているのでしょうか。

森田さん:ダイレクト・マーケティング部の中には通販部門とカタログ部門がありまして、私が主にカタログ全般のマネジメントを担当、越智は取引先対応とそこでの具体的なアクションを担っています。なお、弊社がLINEギフトに出店したのは2021年4月のことです。

お二人が現在の部署に配属された時点では、LINEギフトはどのように使われていたのでしょうか。

森田さん:活発に利用されてはいましたが、さらなる強化策に着手できていない、といった状態でした。ですが、何かイベント事と重なった時などに一気に受注数が増えることがわかっていたので、そうしたポテンシャルをさらに生かすにはどうすればいいかを部署として考え始めたのが、越智が配属された2022年の6月頃からとなります。
越智さん:当時は売れ筋が低価格商品に偏っていて、それ以外の商品が伸び悩んでいる状態でした。

そうした中で、LINEギフトに対してどのような期待を寄せていましたか。

越智さん:はり圧倒的なユーザー数を擁しているということで、北海道から沖縄まで、全国のお客様に商品をお届けするにはうってつけのプラットフォームだと考えていました。とくに、弊社のブランドサイトにアクセスせずとも商品にたどり着けるのは大きなメリットで、新規のお客様との繋がり、認知度アップにもなるだろうと期待していました。

(左から)「アンリ・シャルパンティエ」のフィナンシェ・マドレーヌ、「C³」の焼きティラミスは、各ショップを代表する商品。ともに1,000円台〜と手頃な価格ながら、気持ちが伝わるギフトとして人気を博す。

そもそも御社の商品はギフトと非常に相性がいいように思います。

越智さん:そうですね、弊社としてもギフト展開がメインなので、そうした期待は高かったと思います。それに、長らく店頭での対面販売が中心で、ECにはまだまだ伸び代があるとも感じていました。
森田さん:これまでは百貨店を中心にフォーマルギフトが求められ、価格帯も3,000円以上のものを選ばれるお客様が多かったのですが、LINEギフトではより低単価なカジュアルギフトに高いニーズがあります。これは我々にとっては新たなマーケットを創出するチャレンジでもあり、今現在もLINEギフトの担当者の方と相談しながら、試行錯誤を重ねているところです。

ブランド分割で苦戦するも、「父の日」施策でV字回復

御社はもともと「シュゼット」という1つのショップのアカウントでLINEギフトに出店されていましたが、2022年8月からはこれを「アンリ・シャルパンティエ」と「C³」という2つのショップのアカウントに分割しています。狙いは何でしょう?

越智さん:ブランド名で検索した際にヒットしにくいデメリットがありましたし、単純に、ブランドごとに分けたほうがお客様もわかりやすいだろうと考えたからです。「アンリ・シャルパンティエ」や「C³」というブランド名は知っているけど、会社名まではわからない。そういったお客様も多いかと思います。

ブランドを分けたことによる効果や成果はいかがですか。

森田さん:第一は、もともと弊社のブランドをご存知の方に見つけていただきやすくなったことでしょうか。百貨店で知っていた「アンリ・シャルパンティエ」がLINEギフトで買えるんだという購買体験は、お客様にとっても新鮮だったはずで、売上の面でも十分な成果が得られました。
越智さん:一方で「C³」のほうは当初、苦戦を強いられました。「シュゼット」として育ててきたアカウントは「アンリ・シャルパンティエ」に移行し引き継いでいたため、「C³」は新規出店となり、1からアカウントを育成しなければならなかったんです。

苦戦スタートだった「C³」、どのような対策をとったのでしょうか?

越智さん:LINEギフトではどんな商品が売れるのか、どんなギフトシーンに需要があるのか、商品画像や商品ページはどんなものが好まれるのか……LINEギフトの担当者の方と相談しながら、1年がかりで改善を進めました。決定的だったのは2023年の父の日で、このタイミングに合わせて「焼きティラミス」をプッシュしたところ、これが爆発的なヒットに繋がりました。もともと「シュゼット」として出店していた時から人気の商品ではありましたが、手頃な1,000円台の価格や、少しほろ苦い味わい、ギフトらしいビジュアルなどが、父の日ギフトとしてマッチしたのだと思います。弊社としても大量の在庫を用意して備えていたので、結果に繋がってホッとしましたね。

(左から)株式会社シュゼット ダイレクト・マーケティング部の森田一義さん、越智真理子さん。 

森田さん:こうしたイベントの際の、LINEギフトの爆発力は理解していましたから、それなりに勝算は感じていました。そこで製造部隊とあらかじめ、「このくらい大量のオーダーが来ても、対応できるようにしておこう」と詰めておいて、当日に備えました。結果として、父の日当日の「焼きティラミス」の売上を、ブランドを分割した直後の頃と比べて数十倍にまで持っていけたのはよかったですね。「アンリ・シャルパンティエ」「C³」ともに売上が伸び、トータルで見ても「シュゼット」時代より成長しているので、分割して良かったと感じています。

そうした成果に対して、社内での反応はいかがでしたか。

越智さん:正直、それまではLINEギフトでの売上は社内でさほど重視されていなかった印象ですが、2023年の母の日・父の日あたりを境に、このプラットフォームにもっと注力すべきだという機運が高まりました。バースデー向けの商品を開発したのも、その流れからのことです。

「アンリ・シャルパンティエ」から今年2月に販売された2商品ですね。

越智さん:プティ・フィナンシェ(1,100円)と、フィナンシェ・マドレーヌ(1,300円)です。スイーツのカテゴリーではこの価格帯のバースデー商品があまりなかったので、これもパッケージを工夫すれば売れるのではないかと戦略を立てたところ、実際に好調な売上を記録しました。引き続きクリエイティブの改善などに取り組んでいけば、まだまだ伸ばせると思います。

(上から)LINEギフト限定パッケージとして開発された、「アンリ・シャルパンティエ」の「プティ・フィナンシェ」と、「C³」の「焼きティラミス」の誕生日BOX。 

このほか、大きく成長した商品にはどんなものがありますか?

越智さん:2023年のサマーギフト特集で大きく売り上げを伸ばしたのが、テリーヌ・ドゥ・フリュイ(4個入り、2,812円)です。これまでLINEギフトで売れてきた低価格帯の商品よりも少し値段が上がるチャレンジ商品ではありました。ですが、私が店舗に所属していた際、若い女性のお客様にお勧めしていたのが、まさにこうした見栄えのする商品でした。そのため、LINEギフトのユーザー層にも必ずハマるはずだという直感めいたものがありました。蓋を開けてみれば完売するほどの人気ぶりで、予想を上回る成果に驚きましたが……(笑)。このように試行錯誤を繰り返すことで、新たな売れ筋商品がいくつも育ってきています。

夏のギフトとして人気の「アンリ・シャルパンティエ」テリーヌ・ドゥ・フリュイ。 

着々と業績を伸ばしている様子が伝わってきます。最後に、ここまでのLINEギフトでの取り組みを振り返ってみていかがでしょうか。

森田さん:あらためて感じているのは、やはり我々が従来リーチできていなかった層にちゃんと「シュゼット」の商品が届いているということです。さらに、9,700万人(※1)というLINEユーザーのうち、実に3,500万人(※2)ほどがLINEギフトを利用しているというデータからすれば、まだまだニーズは掘り起こせるはず。そうした点を踏まえて、社内でもソーシャルギフトで成功するためにどのような商品、どのようなコミュニケーションが必要なのかという議論が、活発に交わされるようにもなりました。
引き続き、全国のお客様に喜んでいただけるよう取り組んでいきたいと思います。

※1 LINEアプリ ⽉間アクティブユーザー 2024年3月末時点 
※2 2024年7月時点で「LINEギフト」を贈った、もしくはもらった経験があるユニークユーザー数 

(原稿:友清哲/撮影:木原基行)2024年7月10日