餃子を「特別なギフト」に演出。贈り手の気持ちに寄り添う大阪王将の商品開発

創業55周年を迎える餃子専門店「大阪王将」は、全国に実店舗をチェーン展開する一方で、近年ではEC事業にも積極的に取り組んでいます。そして現在注力しているのが、LINEギフトを中心とするギフト需要の開拓です。「大阪王将」のECを手掛ける株式会社ナインブロックのEC事業統括部長、小西真波さんに話を聞きました。

課題だった若年層の取り込みに成功!

LINEギフトへの出店は2021年からですが、まずはそのきっかけから教えてください。

小西さん:もともとYahoo!ショッピングに出店していた御縁から、同じグループであるLINEギフトを勧められたのが始まりです。Yahoo!ショッピングのほうで一定の成果が得られていた半面、それまでギフト需要が十分に獲得できていなかったことが我々の課題でした。そこでLINEギフトの個別説明会に参加したところ、韓国のソーシャルギフト市場の売り上げ規模や成長率を知り、ポテンシャルや将来性に期待を持ったことから、出店を決めました。 

餃子という商材とギフト市場の相性については、どのように捉えていますか? 

小西さん:これまでもカタログギフト系のチャネルを試してはいたのですが、なかなか思うような成果が得られていなかったのが実情です。ただ、それは訴求の仕方次第であるとも考えていましたし、何よりLINEギフトなら我々がまだ十分にリーチできていない若年層にアピールできるのではないかという期待がありました。 

株式会社ナインブロック EC事業統括部長 小西真波さん

出店から3年。ずばり、ここまでのLINEギフトでの取り組みについて、手応えはいいかがでしょう?

小西さん:課題のひとつであった若年層からたくさんオーダーをいただいていることは、大きな成果です。このあたりはLINEギフト側の担当者の助言に基づいて、改善を重ねてきた結果だと思います。

具体的にはどのような改善を行ったのでしょうか? 

小西さん:たとえば20代のユーザーならどのようなシーンで餃子を食べるのか、できるだけリアルにイメージしてそれをクリエイティブに反映させました。出店した2021年当時はまだコロナ禍の真っ只中でしたから、餃子100個セットなら宅飲み需要やアウトドアでのニーズが狙えるのではないかと想定し、100個の餃子をドーンと見せた迫力ある画像を用意し、屋内外でよりアクティブに餃子が食べられることが伝わる画像にアレンジしました。

「大阪王将 中華 元祖肉餃子100個」ボリューム感と実際の食事シーンを見せることで売上げ急増に繋がった。

たしかに、100個というボリュームは若者のパーティ需要に最適ですね。

小西さん:実際、クリエイティブを改善してすぐに、若年層からのオーダーが急増しました。最近では、ちょっとしたお礼や、カップルが一緒に食事をする際などのニーズも、うまく掘り起こせているのではないかと思います。

奏功したギフト市場向けの施策の数々

自社ECをはじめ、オンラインでの他の販路と比べて、LINEギフトの売れ行きに何か傾向や特徴は感じられますか?

小西さん:若年層からの反響以外では、シーズナルイベントの際に、ユーザーの動きが非常に活発になるのが印象的です。他のオンライン通販では、イベント当日に間に合うようにオーダーが入りますが、LINEギフトの場合は当日の需要が大きく跳ね上がります。

とりわけ反響の大きいイベントは? 

小西さん:弊社の場合は、なんといっても「父の日」が強いですね。「母の日」も一定のオーダーは入りますが、どちらかというとお母さんには花やスイーツを贈る人が多いのではないでしょうか。また、LINEギフト側で特集が組まれた時の反応の大きさにも、毎回驚かされています。割引キャンペーンのように値引きに頼らずに販促できるのは、LINEギフトならではでしょう。 

ギフト市場向けに、何か特別な工夫はされていますか? 

小西さん:梱包の表面に贈呈用であることを示すステッカーを貼ったり、SNS映えするお皿と餃子のセット商品を開発したり、社内だけでなく外部のデザイナーとも連携しながら、SNSで見かけた時に「面白い」「可愛い」と感じていただけるようなパッケージを考案しました。また、「父の日」や「母の日」、あるいは誕生日にはメッセージカードを付けて特別感を演出しています。こちらはLINEギフト限定のサービスです。

「餃子」を誰かに贈りたくなるように、華やかな梱包やお皿付きのギフトボックスや、誕生日のメッセージカード付き商品を開発 

今夏のサマーギフト特集では、60%OFFタイムセールに参加して大きな成果を得たとお聞きしました。  

小西さん:お陰様で日商ベースでは、弊社立ち上げ以来の好記録をマークしました。当初の想定のおよそ3倍の売上げがあったことで、社内からも多くの反響がありましたが、セール期間の途中で在庫が不足してしまったのが悔やまれます。これは我々の準備不足によるもので、次の取り組みに生かすべき反省材料ですね。

まさしく、LINEギフト側の特集の効果が肌身で感じられたとも言えますね。  

小西さん:そうですね。何より、LINEという日常的に使っているツールの随所で弊社の商品が大きく取り上げられていて、家族や友人などから「LINEに大阪王将が出ていたね」と声をかけられる機会が多々ありました。これは得難い経験でした。

「大阪王将」はもともと広く認知されていると思いますが、さらなるブランドリフト効果があった、と。 

小西さん:ブランド名はもちろんですが、「大阪王将」がECに対応していることを、広く知っていただくきっかけになったと思います。

“面白いブランド”として認知を高めたい

自社ECや他社のプラットフォームと比較した場合、ユーザーの反応に違いはありますか?

小西さん:レビューでさまざまな声に触れられるのは他のプラットフォームも同様なのですが、LINEギフトの場合は贈り物なので、他ではあまり見られないエピソードにふれることが多いです。たとえば、友人のお子さんが受験に失敗してしまった時に、「これでも食べて元気を出して」と餃子を贈ったり、お孫さんがおじいちゃんに餃子を100個プレゼントして、「これで栄養をつけて、100歳まで元気でいてね」とメッセージを送ったり。こういうのはLINEギフトならではの使われ方だと感じています。 

なるほど、とてもいいお話ですね。新たなギフトのニーズに気付かされます。

小西さん:そうですね。弊社の商品がそういった使われ方をしてもらえているのは本当に嬉しいことです。こうしたご意見から得た気づきを元に、「敬老の日」向けにアレンジしたパッケージや、励ましの声を添えるステッカーを用意するなど、まだまだやれることはたくさんあると再認識しました。

最後に、LINEギフト上で今後やってみたいことがあれば教えてください。

小西さん:「大阪王将」はこれまで、味はもちろんながら、「量が多いから」とか「安いから」といった理由で選ばれることが多かったように思います。しかし、ただ商品をお送りするだけではなく、贈る側の気持ちを届けるひとつの媒体としてもっと使っていただけるよう、いろんな演出を考えていきたいと思います。イベントに合わせて多種多様なギフトボックスを作るのもいいですし、メッセージカードのバリエーションを増やすのもいいでしょう。LINEギフトでの取り組みをきっかけに、「大切な人と楽しめるブランド」であり、「面白いブランド」であると思っていただけるブランドへ昇華していければ理想的ですね。

誰もが好きな餃子だからこそ、いろんな手法でより広い層にアプローチできそうですね。本日は貴重なお話をありがとうございました。

(原稿:友清哲/撮影:木原基行)2024年8月12日