
お中元やお歳暮など、贈り物として安定した需要を持つフルーツが、LINEギフトでも年々人気を増しています。とりわけ夏場の売上げは、2022年から2023年で約4倍に※、2023年から2024年ではさらに倍増するなど※、顕著な伸びを示しています。その中でもひときわ存在感を発揮している「Seika フルーツギフト店」について、運営元である株式会社船昌の広報部・桜井京子さん、EC事業部・川嶋瑞江さんに話を聞きました。
※2022/7/1~8/31と2023/7/1~8/31、2023/7/1~8/31と2024/7/1~8/31の期間中における、LINEギフトでの野菜・果物カテゴリーの流通額比
※2022/7/1~8/31と2023/7/1~8/31、2023/7/1~8/31と2024/7/1~8/31の期間中における、LINEギフトでの野菜・果物カテゴリーの流通額比
フルーツ×ギフトの新たな可能性
まずはLINEギフト出店の経緯から教えてください。
桜井さん:弊社は大正13年(1924年)に果物問屋として創業、2024年で100周年を迎えました。周年を迎えるにあたり、従来のBtoBだけでなく、新たにBtoCのマーケットを開拓しようという意思決定があり、ECに取り組み始めました。そこでLINEギフトに問い合わせを入れ、出店が実現したのがいまから1年前のことになります。
仲卸業者である御社がBtoCに進出するにあたり、背景にはどのような課題感があったのでしょうか。
桜井さん:昨今、利益率や後継者不足などの問題から、廃業してしまう農家さんが増えています。それに加え、フルーツの等級の高いものは海外へ輸出されるケースも散見し、日本国内で本当に美味しいフルーツを食べられる機会が、少しずつ目減りしている現状があります。そうした問題を根本的に解決するためには、もっともっと多くの人々に日本のフルーツを好きになっていただく必要があると考え、直接美味しいフルーツをお届けできるBtoCに着目しました。

左から、株式会社船昌の広報部・桜井京子さん、EC事業部・川嶋瑞江さん
LINEギフト出店からこの1年、どのような変化を感じていますか。
桜井さん:他のECプラットフォームよりも売上げの伸び方が大きく、驚いています。また、フルーツギフトはどうしても年輩の方のニーズが中心になるので、LINEギフトで30代を中心に若い方にご利用いただけるようになったのも、大きな変化です。
LINEギフトで取り扱う商品は、どのように決定していますか。
川嶋さん:私はもともと果実部所属で、小売店との取引を担当していたので、1年の中でいつどういうフルーツが入ってくるのかを、おおよそ把握しています。それを踏まえて、シーズンに合わせた商品の内容を、社内やLINEギフト側と相談しながら検討するのが基本的な流れになります。
フルーツという商品の特性上、旬のタイミングを捉えることがやはり重要なのですね。
桜井さん:そうですね。繁忙期は在庫の確保に苦労することもありますが、そこはやはり仲卸なので、オーダーを受けてその場ですぐに仕入れるフローが確立しています。ただ、たとえば昨年の「父の日」にはLINEギフトでメロンが非常によく売れて、それまでは1日30個程度の仕入れだったのが突然、「1,000個仕入れさせてください」という状況になり、仕入れ担当の川嶋が頑張ってくれました(笑)。
川嶋さん:私たちは基本的に在庫を抱えていないので、その都度必要な量を仕入れる形になります。「メロンを1,000個仕入れて」と言われた時はびっくりしましたが、これまで培ってきた市場内の信頼関係にいつも助けられています。

青果部門の取り扱い規模は、東洋一と言われる「大田市場」。ここで選りすぐりのフルーツをスタッフが直接仕入れている。
これまでの経験で培った、商品を魅力的に伝えるテクニックとは
「Seika フルーツギフト店」のページはいつも、色とりどりでにぎやかな写真が目を引きます。クリエイティブ面のこだわりについて教えてください。
桜井さん:パッケージデザインなどのアートディレクションについては、社内で議論をして方針を決めています。たとえばハロウィンの時期には柿やみかんに特製のシールを貼れるようにしたり、用途に合わせてカードを添えたり、様々な工夫を行っています。
また、誕生日プレゼント用にはバースデーのカードを添えているのですが、これが予想以上に反響が大きくて驚きました。これまでフルーツは夏冬の贈答用や、お見舞いの品の定番だったので、家族や友人の誕生祝いにフルーツを贈る人が増えているのが本当に嬉しいですね。
また、誕生日プレゼント用にはバースデーのカードを添えているのですが、これが予想以上に反響が大きくて驚きました。これまでフルーツは夏冬の贈答用や、お見舞いの品の定番だったので、家族や友人の誕生祝いにフルーツを贈る人が増えているのが本当に嬉しいですね。



見た目も華やかな2段のお重型のパッケージやハロウィン仕様になった盛り合わせセットなど、贈り手も貰い手もワクワクするようなアイディアで、フルーツをギフト商品として仕立てている。
クリエイティブの施策が、うまくギフト需要とマッチしている、と。
桜井さん:そうですね。バースデーに限らずですが、ギフトである以上、やはりちゃんとデザインしたカードを添えてあげたいという思いがあります。そこでより汎用的に使えるものをと、「ほんの気持ちです」というカードを作ってみたら、これがすごく需要があって驚きました。日本人的なおもてなしの気持ちにはまったのかもしれません。
また、魅力的な装飾も、ギフト需要を後押ししているように感じます。
桜井さん:最大限に気を使っているのは、商品画像とそのまま同じものをお手元に届けることです。「写真で見るよりちょっと……」ということがあってはいけません。また、フルーツはものによって傷みやすいので、梱包は試作に試作を重ねて万全を期しています。緩衝材を入れた状態で実際に箱を手に持って振って果物が動かなくなるまで検証を重ねたりなど、最適な状態でお届けできるよう気をつけています。
商品に「食べごろの見極め方」の解説カードを添えているのも、専門店らしい気配りですね。
桜井さん:せっかく高品質なフルーツを贈っても、追熟(※フルーツを一定期間置いて完熟させること)がうまくいかず、適熟を逃してしまうケースが意外と多いのです。たとえばメロンの場合は、日の当たらない常温の場所で保管することや、つるの状態から食べ頃を判断するポイントなどをカードでご説明しています。
美味しいものを美味しいまま食べてもらいたいという、強い思いを感じさせます。
桜井さん:そうですね。グループ会社で全てパッケージを行っているのもそのためで、果物に最適な温度に管理された定温冷蔵庫内で、熟練の作業者がひとつひとつ丁寧にフルーツを検品してからギフトボックスに入れています。
その意味ではLINEギフト上に寄せていただくレビューは重要で、たとえば歓びの声と共にアップしていただいた写真を見て、果物の配置の微妙なズレなどがあるのを見つけると、直ちに梱包や梱包材の改善を検討し、より美味しくお届けできるよう改善に努めています。
その意味ではLINEギフト上に寄せていただくレビューは重要で、たとえば歓びの声と共にアップしていただいた写真を見て、果物の配置の微妙なズレなどがあるのを見つけると、直ちに梱包や梱包材の改善を検討し、より美味しくお届けできるよう改善に努めています。
LINEギフトでのここまでの取り組みについて、手応えはいかがでしょうか。
桜井さん:「父の日」の反響がやはり印象的で、普段レビューをいただくことが少ない層の方から非常に多くのレビューをいただきました。「息子からこんなプレゼントをもらった」という感激のコメントであふれていて、我々も本当に嬉しかったですね。他のECでは、こうした贈られた側の声に触れることはありませんから、尚更でした。
川嶋さん:一方で、こうして好評いただいている現状に甘んじることなく、まだまだSeikaブランドを露出してアピールしていく必要があると感じています。旬のフルーツを多くの方に味わっていただくためにも、引き続き新しい商品もどんどん出していきたいですね。
含蓄と知見に満ちた老舗ならではの取り組み、大変興味深いです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
(原稿:友清哲 撮影:木原基行)2024年12月10日