「小樽洋菓子舗ルタオ」は、いかにしてLINEギフトで不動の人気を確立したのか

1998年に誕生した北海道発の人気洋菓子ブランド「小樽洋菓子舗ルタオ」。2020年にLINEギフトに出店すると、すぐに看板商品の「ドゥーブルフロマージュ」が配送ギフトランキングでトップを獲得するなど、瞬く間にLINEギフト内で確固たる人気を築き上げました。さらに同商品は今年、LINEギフト10周年企画の「LINEギフトアワード」で最優秀ギフト賞(配送ギフト部門)を受賞するなど、その勢いは止まりません。ソーシャルギフトにおける戦略について、運営を担当する株式会社ケイシイシイの二口崇史さんに話を聞きました。

コロナ禍の危機的状況下でECが成長

LINEギフト出店は2020年。まずはその経緯から教えてください。

二口さん:私どもの「ルタオ」は北海道内にしか実店舗を持っておらず、その他の販路としてECでお取り寄せスイーツとして楽しんでいただいたり、ギフトとして使っていただくところに注力してきました。

それに加えてソーシャルギフトの可能性を模索し、情報収集を行っていくなかで、ご縁を得たのがLINEギフトでした。そこで担当の方から具体的な話を聞き、2カ月ほどの準備期間を経て、実際に出店に漕ぎ着けたのが2020年の10月末のことです。

当時はちょうどコロナ禍の真っ只中でした。

二口さん:そうですね。春に緊急事態宣言が発令されてからは、県をまたいでの移動が難しくなり、北海道にほとんど人が来ない状況になってしまいました。とくに顕著だったのがやはりインバウンド需要の低迷で、当然、店舗も売上が立たず、その分どうにかECでの販促を頑張っていました。ただ、その努力の甲斐あってか、通販に関してはこの時期、右肩上がりで成長しました。

株式会社ケイシイシイ ダイレクトマーケティング部 通販企画二課 リーダー 二口崇史さん

そんななか、LINEギフトというプラットフォームに期待したことは何だったのでしょうか。

二口さん:他社のプラットフォームも含めて、通販の業績全体が伸びているなかで、LINEギフトは他のモールとはまた違った、新しいお客様との接点作りに繋がるのではないかと考えていました。

この時点で「ルタオ」は立ち上げから22~23年目に差し掛かっていて、ブランドとしてそれなりに成熟していました。お客様と共に時間を重ねていく中で、自社 EC はとくに 50~60 代のお客様が中心であることを把握していたため、我々としてはさらに若年層のお客様を獲得することが、中長期的に重要な目標であると考えていました。

観光客への知名度からすると、若年層からも十分な支持を得ているイメージがありますが。

二口さん:たしかに、小樽の街には若い方も大勢いらっしゃいますが、実際には20代の方には「ルタオ」の名を知らない人がまだいらっしゃると感じています。これはもちろん、道内にしか直営店舗を持っていないことにも一因があるでしょう。

道外に実店舗を出さないのは、戦略的なものですか?

二口さん:そうですね。北海道フェアやバレンタインフェアのような企画では、全国各地で出店させていただいていますが、基本的には北海道・小樽に来て召し上がっていただき、気に入っていただけたなら購入してもらい、さらにルタオを好きになってもらって通販や物産展などで購入してほしい、という考えのもと取り組んでいます。

売上アップのための数々の工夫

LINEギフト出店後、わずか1年で売上げが8倍という、驚異的な伸び率を記録しています。これは想定通りの成長なのでしょうか。

二口さん:いえ、出店当初は商品を3点ほどしか用意していなかったこともあり、むしろ受注ペースはイメージよりも穏やかでした。ひとつの転機は2020年のクリスマスで、この頃から予想を超えるペースで受注数が伸びていった印象です。

その秘訣は何だったのでしょう?

二口さん:急成長の要因は2つあると思います。1つは、LINEギフトさんの、スイーツジャンルにおける売れ筋の価格帯が3,000円前後で、弊社の看板商品「ドゥーブルフロマージュ」のチーズケーキの価格がマッチしていたこと。そして2つ目は、商品名をアレンジしたことです。

弊社に限らず、自信とこだわりのある商品だからこそ、そのままの商品名で出品することが多いと思います。しかし伝わりにくい横文字のまま展開するよりも、たとえば「チョコレートチーズケーキ」と記載したり、「白ぶどうを使ったレアチョコレート」などと言い換えたりしたほうが、初めて目にするユーザー様にとってやはりわかりやすいですからね。

看板商品の「ドゥーブルフロマージュ」(左)「白ぶどうナイアガラのレアチョコレート」(右)

なるほど。商品をいかに率直に伝えるかを重視されたわけですね。

二口さん:その通りです。また、表示される1枚目の画像のインパクトも大切で、いかに美味しそうに見えるかという工夫も重要でしょう。LINEギフトの場合、1枚目には文字入れができないので、ケーキなのかチョコなのか、それともロールケーキなのか、なるべくわかりやすい画像を用意するようにしています。

また、徹底した在庫管理も御社の特徴だと思います。

二口さん:そうですね。複数のモールに出店するなかで、とくに初期の頃はLINEギフトの特性を知るために、他の商品ページをじっくり観察していました。そこで気付いたのが、在庫が0になると商品ページがお客様に見える場所から消えてしまうことで、まずこれを回避しなければならないと考えました。

さらに付け加えれば、配送ギフトの人気ランキングに掲載されると、売上のインパクトがとても強いので、LINEギフトの成長性を踏まえて、何が何でも在庫を切らさないよう、優先的に割り振るようにしてました。

まずはプラットフォームの特性を分析した、と。

二口さん:そうしているうちに、とくに受注が大きく伸びる時期というのがわかってきて、在庫管理もより効率化することができました。

そうした施策が実を結び、御社は出店1年目から配送ギフトの人気ランキングでトップを取りました。2年目以降、何か意識されたことはありますか?

二口さん:商品点数を増やすことですね。弊社は通年商品の点数が意外と少ないので、組み合わせるなどして、バリエーションを増やしました。現状、70~80ほどの商品を展開しており、露出を増やすことでお客様の目に触れる機会も増やしていく、という戦略を立てました。

そして実は、「ルタオ」にはローストビーフやピザ、カレーなど、スイーツ以外の商品も揃っているので、スイーツに囚われることなく、多様なジャンルで展開できるのも強みだと感じています。

スイーツ以外にも幅広いジャンルの商品ラインナップでさらに人気を伸ばしている

数々の工夫の成果として、今年はLINEギフト10周年企画「LINEギフトアワード」で最優秀ギフト賞(配送ギフト部門)を受賞されました。

二口さん:ギフトとして使っていただくことに注力してきましたから、これだけ多くの方に選んでいただけたことは自信に繋がっています。まだまだ出店者は増えていくでしょうし、他のショップさんに負けられないと気持ちを引き締めているところです。
「10周年LINEギフトアワード」でルタオの「ドゥーブルフロマージュ」が配送ギフト部門の最優秀ギフト賞に選ばれた。

LINEギフトでのここまでの成果について、どう感じていますか。

二口さん:体感的に、課題であった20~30代のお客様をちゃんと取り込めているように思いますし、また、若い世代にギフトを送る習慣が根づきつつあるようにも感じています。これは大きな成果ですね。また、仕事外でも「LINEギフトって使ってる?」という会話をよくするのですが、その際に、私がルタオで働いているとは知らない若い世代の方から「ルタオを贈った」と聞いたこともあり、幅広い世代に利用していただいているんだなと、とても実感しました。

最後に、LINEギフトでこれからやりたいことがあれば教えてください。

二口さん:今後はバースデー向けのアイテムの拡充をしたり、ギフトとして使いやすいようメッセージカードなどのサービスを取り入れたり、あるいは受け取る側が味を選べる機能の活用を進めるなど、いくつかの施策を考えています。今後もこうした「誰かを想い、喜ばせたいという気持ち」やギフトの文化と共に、「ルタオ」のブランドをさらに大きく成長させていければと思っています。

(原稿:友清哲)2025年4月30日